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PBL教育フォーラム2018

PBL教育フォーラム2018 「SNS時代のPBL-アクティブな学びを救うのか、壊すのか-」
【2018年12月1日開催】

開催報告

PBL教育フォーラム2018

2018年12月1日(土)、同志社大学今出川キャンパス良心館204番教室において、同志社大学PBL推進支援センター主催・株式会社SIGEL共催によるPBL教育フォーラム2018「SNS時代のPBL -アクティブな学びを救うのか、壊すのか-」を開催した。
当日は、大学関係者を中心にその他教育機関の教員、職員、学生など関係者を含め80名を超える参加者(参加者内訳[参加者内訳[PDF 233KB]])があった。

PBL教育フォーラム2018

まず、同志社大学教育支援機構長・植木朝子文学部教授より、開会にあたって挨拶の辞が述べられた。同志社大学PBL推進支援センターは、PBL(Project-Based Learning)の理論と実践を推進する拠点として2009年に設立され本年で10年目となるが、PBLのモデル開発、運営支援、研究会の実施等、様々な活動を行ってきた。また多様なテーマのフォーラムも開催し、今年も3つの大学から発表がなされる。北九州市立大学、新潟大学、同志社大学、各大学の登壇者の方々の紹介に続いて、有意義なフォーラムになることを期待しているとの旨を述べられた。

PBL教育フォーラム2018

引き続き、同志社大学PBL推進支援センター長・新茂之文学部教授より、本フォーラムの趣旨が述べられた。SNSは今や我々にとって欠かせない道具・技術になっている。そのSNSを、PBLにおいて学びを深めるためにどのように展開していくべきか、実践報告を踏まえて皆様と一緒に考えていきたい。SNSの無い時代においても学び・探求の共同体をどうやって築いていくかは重要な課題であったが、SNSのある現代においても非常に重要なテーマであると考えている。SNSには様々な利点と欠点があり、アクティブな学びを救うのか、壊すのか、その功罪を見極める必要があると感じている。本日のテーマについて、PBLの推進に関わっている我々にとって非常に重要な主題として受け止めていると語られた。

≪第1部 各大学実践報告≫
第1部では、北九州市立大学、新潟大学、同志社大学の、各大学教員によるPBLの取り組み概要と学生による実践報告がなされた。
北九州市立大学
【地域創生実習~地域の正式な一員として~】
取組概要: 北九州市立大学 教授、地域創生学群学群長、地域共生教育センター長
        眞鍋 和博 氏
学生による発表: 中田 沙紀 氏 (地域創生学群4年)
            尾崎 奈緒子 氏 (地域創生学群4年)
            金子 美咲 氏 (地域創生学群4年)
北九州市立大学

北九州市立大学地域創生学群は2009年に開設され、PBL科目である地域創生実習が1~3年次で必修科目として定められており、持続可能な地域づくりを目指し、地域での実践教育に取り組まれている。地域創生学群 学群長・地域共生教育センター長 眞鍋和博教授より学群の特徴について紹介があり、初年次には日常の課題に焦点をあて、2年次以降は専門分野からアプローチし地域の方々と「日常」を共有する中で地域課題を捉え、学生が多くのチャレンジや経験および失敗を通じて成長されてきた経緯を述べられた。
中田氏は、北九州市ESD(Education for Sustainable Development)協議会と共に若い世代にESDの活動を周知し推進させる取り組みの中でLINEとFacebookを活用されていた例を挙げ、それぞれの利点と事前のルール設定の必要性など課題について語られた。
尾崎氏は、大学と高校の架け橋となることを目的とした広報実習において高校生が気軽に閲覧できるとの観点からTwitterとYouTubeを利用したがフォロワー数、登録者がほぼ身内に留まり、広報の機能を果たすことの難しさについて述べられた。
金子氏は、北九州市の女性創業者を支援する「ひなの会」にインターシップ生として参加し、運営・
広報冊子作成に関わる中で、3種のSNSを活用し、それぞれの特性に応じて使い分けをしていた事例を紹介し、そこから見出された課題についても語られた。

新潟大学
【企業人と学生のハイブリッド(社会とキャリア選択A)の取り組み】
取組概要:新潟大学 准教授、'教育・学生支援機構キャリアセンター 副センター長
        西條 秀俊 氏
学生による発表:吉田 泰一朗 氏 (工学部3年)
           和田 隆熙 氏 (経済学部2年)
           福原 琢未 氏(法学部2年)
新潟大学

新潟大学では、2017年度からクォーター制が導入されたことに伴って、今年度(2018年度)から、当授業科目もプログラムを大幅にリニューアルした。具体的には、新潟県で初めての試みとして、企業の若手社員の研修も兼ねて若手社員と学生がチームを形成し、企業の課題に取り組むPBL科目を開講している。企業の若手社員と学生が協働して地域の人材育成を目指すプログラムについて教育・学生支援機構キャリアセンター 副センター長 西條秀俊准教授より講義概要、到達目標の紹介があり、学生が社会人と共に取組みを行うことで課題解決のみならず若手社員の研修と大学の学びをどう繋げていけるのか、それぞれのキャリアにどう繋げていけるのかということを探求していくことがこのプログラムのミッションであると語られた。
吉田氏は、マーケティングを通じて企業を支援する事業において、レポート作成時間の削減をテーマに、社員の方とともにAIツール導入について提案をまとめられた。そのプログラムの中で、LINEを積極的に利用し、対面でない分意見を述べやすい、情報共有に有効であるとのメリットを挙げられ、SNSで意見を交わしている相手とは直接の議論の場でも距離が縮まるのではないかとの考えを述べられた。
和田氏は、定年延長、労働人口の減少などにより雇用の上限年齢が上昇している中で働き続けるための要件を明らかにし、これからの人材教育のあり方を探ることをテーマに取組みをされた。その際、人材教育の事例収集時にLINEを用いてメンバーとの情報共有、収集方法のフィードバック、グループ通話でのミーティングを行っており、SNSにはフットワークの軽さというメリットがあると語られた。
福原氏は、人材育成の一環として5S活動(整理、整頓、清掃、清潔、躾)を実施されている企業において社員の活動を促進させる提案を行い、職場環境の改善に寄与された。主な連絡手段としてはメールを使用し、LINEは、担当社会人の企業では業務時間中は使用できないため主に学生間の連絡に用いられていたことが紹介された。

同志社大学
【プロジェクト科目】
取組概要:同志社女子大学 学芸学部音楽学科 嘱託講師
       大江 宮子 氏
学生による発表:橋本 有加 氏 (政策学部4年)
           山下 千尋 氏 (文学部4年)
           齊藤 奈緒 氏 (文学部3年)
同志社大学

同志社大学において2012~2014年「「音楽は心の薬」‐高齢者に音楽環境を整える・ラジオを活用して」、2015~2017「ラジオで発信-高齢者と若者の音楽イベント制作」を担当された同志社女子大学 学芸学部音楽学科 大江宮子講師がこれらのプロジェクト科目の中での高齢者の方を元気にする取組みについて述べられた。大江講師は15年余り老人ホームでボランティアをされており、施設を訪問した際に高齢者の方が喜ばれたエピソードや、履修生によるラジオ番組制作の経緯について紹介された。
橋本氏からは、「若者と高齢者の心の距離を縮める」というプロジェクトの目的と具体的な手段についての説明および施設訪問で高齢者の方と歌やゲームにより交流した活動についての報告があった。
齊藤氏は、ラジオ制作においてリクエスト募集型番組と情報発信型番組2つの番組を企画し、音楽を通じて若者と高齢者が相互の世代を知る機会につながったことを語られた。またYouTubeでのライブ配信やTwitterでラジオとの同時放送を実施し、ラジオを試聴できない環境の方も楽しめるような方策をとられたことを発表された。
山下氏は、プロジェクトの集大成としての音楽イベントにおいて高齢者の集客方法やプログラム内容の工夫について話され、YouTubeのライブ配信を行ったことにより、途中から参加された方があらかじめイベントの雰囲気を知ることができ好評であった事例などについて述べられた。
このプロジェクト成功の要因として確実な情報共有が挙げられ、役割ごとにLINEのグループを作成しグループ内だけでなく各グループ間でも連絡をとり、さらに全体LINEで決定事項を報告して相互に連絡が行き渡る体制がとられていたことが報告された。

≪第2部 パネルディスカッション≫
〈パネリスト〉
  •  北九州市立大学
     【地域創生実習~地域の正式な一員として~】履修生
     名越 翔太 氏 (地域創生学群4年)
  •  新潟大学
     【企業人と学生のハイブリッド(社会とキャリア選択A)の取り組み】履修生
     和田 隆宏 氏 (経済学部2年)
  •  同志社大学
     【プロジェクト科目】履修生
     橋本 有加 氏 (政策学部4年)
〈コーディネーター〉
  •  同志社大学 前PBL推進支援センター長 文学部教授
     山田 和人 氏

パネルディスカッションを始めるにあたって、前PBL推進支援センター長 山田和人文学部教授が今回のフォーラムの趣旨について改めて触れられ、常にSNSに取り囲まれているという環境の中でPBL教育を実践する場合SNSが人間の考え方・感じ方といったものに影響を及ぼす可能性やそれに伴って起こりうる問題を意識することが大切であり、その事象に対してどのような取り組みをしていくべきかとの問題提起がなされた。PBL科目を学んでこられた3名のパネリストの方々が他大学のプロジェクトから掴まれたことや質問したいことについて言及され、その後さらにSNSがPBL教育における集団的学びを深化させていくのに有効に働くのかそうでないのかについて、会場との質疑応答を交えて議論が展開された。

橋本氏から、SNSの活用について効果的であるように見えながら実際の活動の中ではビラ配りというアナログな手法によってやっと集客できた現状があり、広報をSNSに特化することについてどのように考えるかとの問いかけがあった。橋本氏の問いに対して、名越氏はSNSによる広報は効果が出ないというのが現状である、伝えたい対象に情報を届けるためにどのような広報手段を用いるか精査する必要があり、アナログとの二面性の必要性があるとの考えを述べられた。
さらにプロジェクトのチーム内でのSNSの使用について、橋本氏がSNS上で専門性のある議論や意思決定をする場合に意思疎通が正しくなされないという問題があること、名越氏が全てをSNS上ですべきではない、SNSは情報共有のために使用し議論は必ず対面で行うべきであるとの意見を述べられた。

和田氏からSNSをチームビルディングで有効活用できた点、改善点などがあるか質問があり、橋本氏はリーダーとしての立場からチームのモチベーションアップを目指して使用したが必ずしも上手くいかなかったこと、名越氏はSNSに頼らず直接会うことの方を重視したことを語られた。
3名の学生の共通見解として、普段から使い慣れており即時性のあるSNSをメンバー間の情報共有のツールとして活用することは有益であるが、広報手段として用いることには現状では限界があること、プロジェクトの要である目標・目的の共有については対面で議論を深めて全員で共有することが不可欠であるとの考えが示された。

ここまでの議論を受け、山田和人教授よりSNSは即時性はあるが継続性・持続性といった意味では弱い、そのような属性を理解せずに皆がSNSを無意識のうちに使用している状況の中で学びのコミュニティーを深めるのに役立つのかという観点について、3名の学生にさらに議論して頂き、その後会場の参加者の方から質問を頂きたいとの提案があった。

名越氏、和田氏とも自身がSNSを無意識に使用している現状があることを語り、名越氏は無くてはならないツールではあるが、意思疎通の面では本質な部分が分かり合えていないと感じており、和田氏は現代のコミュニケーションはバーチャルな場合と実際に対面する場合とに二極化していると感じるが、SNSなどのツールについてその良し悪しは使う側に委ねられているとの考えのもと適切に活用していくことが重要であるとの意見を述べられた。橋本氏は、SNS上での情報発信は得意だが対面のコミュニケーションは苦手という人が身近にいる状況に触れ、そのような人の場合対面の議論を必要とする学びにおいては困難をきたすことが予想され、今の段階では断定はできないが学びの質を下げる原因にもなり得るとの考えを示された。

さらに山田和人教授より、SNSは情報共有ツールとして非常に利便性に優れているが、そこで共有している情報や知識の質といったものが問題になってくる、もう既にSNSがある時代に置かれてしまった今の学生にとってはその問題をどれだけ意識できるかが重要であり、SNSの無かった時代に学んでこられた方々はそういった学生を取り巻く環境や考えに対してどのような意見や質問を持たれたかについて、会場の参加者に問いかけがなされた。

質疑応答

会場より、SNSが不得意なため存在感が希薄になった学生にSNSで働きかけることで改善した事例の有無や、チーム内の情報共有のあるべき姿についての質問があり、パネリストから、SNSでは個別のフォローが難しいためやはり対面を重視したり、メンバーの役割を明確に決めると各自の活動が活性化した例が紹介された。さらに、全てをSNSに集約すると機能性の障害に取り込まれてしまう可能性がある、対面の議論の中でSNS上では埋もれがちな意見を拾っていくべきとの見解に対しては、対面が苦手でSNS上での方が意見を表明しやすい場合もあり得る、今回のフォーラムで多くの方が示されているようにSNSと対面との使い分けが必要であるとの考えが述べられた。

山田先生

最後に、山田和人教授より、SNS時代のPBLのあり方を考えた時に我々はSNSをどのように活用すべきかという課題に意識的に取り組んでいかなければならない、SNSを適切に活用しかつリスクを避けて一番根幹になる学びの深化という部分に集約していくことができるのかということが今後の私たちにとって大きな課題になってくる、そしてその課題自体が重要であることがこの場で共有できたとすれば大いに意義があったとの所感が述べられ、フォーラムは閉会となった。

教育フォーラム2018の総括

2018年度のPBL教育フォーラムでは、北九州市立大学、新潟大学、同志社大学から、PBLを取りいれた授業の実践の報告があった。北九州市立大学地域創生学群は、PBL科目である「地域創生実習」を必修の科目として置いている。受講生は、その科目のなかで、持続可能な地域づくりを視野に納めて、地域でなにを実践できるのか、その実際的な取りくみを学んでいる。新潟大学が展開するPBL科目は、企業のインターシップである。受講生は、企業の若手社員と協働して、企業が実施する人材の教育を実際的に学び、それにたいして、学生の視点から提言を行なう。同志社大学は、音楽を通じて高齢者と学生が交流し、ラジオを通じて、それを社会に発信していく、という活動を進めている。
こうした報告から分かるように、PBLは、社会と大学との接点にある。大学を主な学びの場としている学生たちは、社会に出て社会の実際の動きを肌で感じて立てた企画を社会のなかで遂行していく。確かに、産業界と大学との連携を強調しそのためのさまざまな施策を打ちだしている現代にあっては、PBLは、時宜に適った学びである。これを否定してはならない。一方で、大学は、基礎的な研究の場でもあり、それを学ぶための機会を学生たちに提供している。その意味では、大学は、世間から遊離して世のなかでは役に立たない知識を学生たちに教えこんでいる。
しかし、このような大学の特質も忘れてはならない。教養がなくても生活を送ることはできる。とはいえ、教養があれば、生活に深みが出てくる。その点で、教養は、わたくしたちの生活の役に立っている。同じように、基礎的な研究から明らかになってくる知識は、すぐには役に立たない。しかしながら、それは、応用的な研究の土台であり、その広がりを支えている。つまり、基礎的な研究は役に立つのである。
あまりにも短絡的に狭い了見で役に立つのか立たないのか、それを判断してはならない。さまざまな活動がいろいろと展開していくなかで、役に立たないと考えていた知識が有効になったり、逆に、場合に依っては、役に立つと思っていた知識の効力が消失してしまったりする。わたくしたちの生活の脈絡に応じて、知識の有用性を多角的に検討しなければならない。それゆえ、わたくしたちは、社会のなかで、大学で教えたり学んだりしている知識の多元的把握に努めていくべきである。大学と社会との繋ぎ目に位置するPBLは、それを問いなおすための活動である。今回のフォーラムは、それを改めて考えなおすための機会になったのではないか。

開催概要

PBL教育フォーラム2018ポスター

PBL教育フォーラム2018 フライヤー[PDF 1.3MB]

2018年度同志社大学PBL推進支援センター事業に係るPBL教育フォーラムを開催します。

テーマ 「SNS時代のPBL-アクティブな学びを救うのか、壊すのか-」
プログラム 12:30 受付開始

13:00~ 開会
 開会挨拶 植木 朝子 / 同志社大学 教育支援機構長・文学部 教授
 趣旨説明 新 茂之  / 同志社大学 PBL推進支援センター長・文学部 教授

第1部<各大学実践報告>
13:10~
 北九州一立大学 「地域創生実習~地域の正式な一員として~」
13:40~
 新潟大学 「企業人と学生のハイブリット(社会とキャリア選択A)の取り組み」
14:10~
 同志社大学  「プロジェクト科目」
14:40~
 休憩 

第2部<パネルディスカッション>
 コーディネーター
  山田 和人 / 同志社大学 前PBL推進支援センター長・文学部 教授

16:00  閉会
主催 同志社大学PBL推進支援センター
共催 株式会社SIGEL
プロジェクト科目の詳細な取組については プロジェクト科目(オリジナルサイト) でご案内しています。
お問い合わせ

PBL推進支援センター

同志社大学 教育支援機構 教務部 今出川校地教務課内
TEL:075-251-4630
FAX:075-251-3064
E-mail:ji-pbl@mail.doshisha.ac.jp

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